2025.11.08
- 設備保全・補修
キュービクルに欠かせないトランスとは?
工場などの大型施設で使用されるキュービクル(高圧受電設備)は、高圧で受けた電気を工場内の設備で使える電圧に変換するための装置です。その中の部品として、電圧変換を担っているのが、トランス(変圧器)です。
トランスは、キュービクルの心臓部とも言え、その性能は、工場の安定稼働に直結します。
本記事では、キュービクルに欠かせないトランスの仕組みや種類、耐用年数、そしてPCB含有に関する注意点について解説いたします。
本記事では、キュービクルの保守点検内容と、現場担当者の方が押さえておくべきポイントについて解説します。
キュービクルに欠かせないトランスとは?

トランス(変圧器)は、電圧を変換するための電気機器です。
キュービクルは、電力会社から供給される高圧電力(通常6,600V)を、工場で使用できる200Vまたは400Vに下げる役割を果たします。つまり、工場で使用できる電圧にするまでの、高圧電力を受け、工場で使用できる電力に変え、その電力を供給するという流れのうち、「変える」部分を担っているのがトランスです。
この変圧が正しく行われることで、製造ラインや工作機械が安定して稼働します。
トランスの種類
キュービクルに使用されるトランスには、大きく分けて以下の2種類があります。どの種類を使用するかは、設置環境(屋内・屋外)や使用電力、コスト、安全性などを考慮し、総合的に判断する必要があります。
・油入変圧器(油入トランス)
絶縁と冷却に絶縁油を使用するタイプです。放熱性能が高く、大電力を扱う工場や屋外設置に向いています。使用する際には、定期的な絶縁油の検査や交換が必要です。
・乾式変圧器(モールドトランス)
絶縁油を使用せず、樹脂(エポキシ)で絶縁処理するタイプです。火災リスクが低く、屋内設置やクリーンルーム環境に適しています。メンテナンスが容易で、環境負荷も少ないのが特徴です。
トランスの役割
キュービクル内のトランスの主な役割は以下の通りです。
・高圧電力の変換(降圧)
上述の通り、受電電圧6,600Vを200Vまたは400Vに変換します。これにより、機械設備や制御盤が安全に稼働できます。
・電力品質の安定化
外部からの電圧変動を吸収し、安定した電圧を供給します。
・設備保護
過負荷や短絡時には、遮断装置と連携して工場の設備を守ります。
つまり、トランスは単なる電圧変換器ではなく、工場全体の電力品質を維持する重要な機器です。
トランスの仕組み
トランスは、電磁誘導の原理を利用して電圧を変換します。一次側(高圧側)のコイルに交流電流を流すと、磁束が発生し、鉄心を介して二次側(低圧側)のコイルに電圧が誘導されます。下記の通り、一次・二次巻線の巻数によって、昇圧もしくは降圧されます。
・一次巻線の巻数が多く、二次巻線が少ないと「降圧」される
・一次巻線が少なく、二次巻線が多いと「昇圧」される
キュービクルのトランスでは、主に前者の「降圧変換」が行われています。
トランスの耐用年数
トランスの法定耐用年数は15年(減価償却資産の耐用年数省令による)ですが、実際の使用可能期間は環境によって異なります。一般的な目安は下記の通りです。
表1. トランスの耐用年数
| 種類 | 耐用年数目安 | 主な劣化の原因 |
| 油入トランス | 約20~25年 | 絶縁油の劣化、内部発熱 |
| 乾式トランス | 約15~20年 | 樹脂の劣化、温度上昇 |
但し、以下のような兆候が見られた場合は、更新を検討する必要があります。
・トランス内部の異音・異臭
・絶縁抵抗値の低下
・絶縁油の酸化・変色(油入式の場合)
・部品の製造中止、廃盤
劣化が進むと、最悪の場合は停電や火災に発展する恐れがあります。
そのため、定期点検に加え、15〜20年を目安に更新計画を立てることが重要です。
トランスはPCB含有に注意!
古い油入トランスには、PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む絶縁油が使用されていた可能性があります。PCBは毒性が非常に強く、「PCB特別措置法」により厳格な保管・処理が義務付けられています。

引用:環境省 低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイト
http://pcb-soukishori.env.go.jp/teinoudo/necessity_of_disposal/
PCB含有トランスの識別方法
銘板の製造年やメーカー情報、絶縁油の成分分析によって判断可能です。特に1972年(昭和47年)以前製造の油入機器はPCB含有の可能性が高いとされています。
もしPCBが含まれていた場合には、認定処理施設(JESCO)での適正処理が必要です。また、PCB不含トランスへの更新時には、絶縁油分析とPCB無害化証明を取得しておくことが推奨されます。
低濃度PCB廃棄物の処理期限が令和9年3月末日となっています。PCB含有トランスを放置すると、環境汚染リスクだけでなく、法令違反に問われる可能性もあります。更新・撤去時は必ず専門業者に依頼し、適切な対応を行いましょう。
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