2026.01.15
- 設備保全・補修
PAS(気中開閉装置)の交換・更新のポイント
PAS(気中開閉器)は、万が一の故障時に自社だけでなく近隣地域への停電を引き起こす可能性がある、極めて重要な機器です。
「推奨交換時期を過ぎているが、まだ動いているから大丈夫だろうか」
「交換にはどれくらいの費用と停電時間が必要なのか」
このような疑問をお持ちの方へ、本記事では、PASの交換・更新の判断基準、放置するリスク、そしてスムーズな更新工事のポイントについて解説します。
PAS(気中開閉器)の役割と更新が必要な理由
交換ポイントの解説の前に、なぜPASの更新が重要なのか、その役割と寿命について整理します。
PASとSOGの役割
PASは、主に架空引込方式の高圧受電設備において、構内ネットワークの入口(電柱の上)に設置されるスイッチです。通常、SOG制御装置とセットで運用され、構内で地絡事故が発生した際に、瞬時に電気を遮断する役割を担っています。
更新を怠る最大のリスク「波及事故」
PASが経年劣化により正しく動作しないと、自社工場内で発生した地絡事故を食い止めることができません。その結果、電力会社の配電用変電所の遮断器が作動し、同じ配電線に繋がっている近隣の工場、病院、住宅などが一斉に停電してしまいます。
これを「波及事故」と呼びます。波及事故が発生した場合、近隣への損害賠償請求が発生するなど、企業の社会的信用に関わる重大な問題に発展するケースがあります。
PASの更新推奨時期
日本電機工業会(JEMA)のガイドラインによると、PASの更新推奨時期は以下の通り定められています。
• PAS本体:10年〜15年
• SOG制御装置:10年〜15年
屋外環境に設置されているため、見た目に異常がなくても内部の絶縁劣化や錆、機構の固着が進行している場合があります。「壊れてから交換」では手遅れになる機器の筆頭と言えます。
PAS(気中開閉器)交換・更新のポイント
現場担当者が押さえておくべき、PAS更新時の具体的なポイントを4つにまとめました。
1. PAS本体とSOG制御装置は「セット更新」が鉄則
コスト削減のために「PAS本体だけ」、あるいは「SOG制御装置だけ」を交換したいというご相談を頂くことがありますが、原則として同時交換が必要です。
メーカーが異なったり、新旧の世代が混在したりすると、特性の不一致により誤動作や不動作の原因となります。また、どちらか一方が寿命を迎えている場合、もう一方も同様に劣化している可能性が高いため、セットでの更新が最も安全で経済的です。
2. VT・LA内蔵型の検討
古いPASからの更新の場合、以下の機器が別置されているか、あるいは内蔵されているかを確認する必要があります。
• VT(変圧器): SOG制御装置の電源を確保するもの
• LA(避雷器): 落雷から設備を守るもの
最新のPASは、これら(VT・LA)を本体に内蔵したモデルが主流です。内蔵型を選定することで、電柱周りの配線がスッキリし、接続箇所が減ることでトラブルのリスクも低減できます。また、施工費の抑制にもつながります。
3. ステンレス製筐体の採用と塩害対策
PASは常に風雨にさらされています。旧式のPASは鉄製(塗装)のものが多く、経年により錆が発生し、最悪の場合は外箱に穴が開くケースもあります。
更新時は、耐候性に優れたステンレス製のPASを選定することを強く推奨します。また、工場が沿岸部にある場合は「塩害仕様」や「重塩害仕様」の選定が必須です。設置環境に適さない仕様を選ぶと、寿命が極端に短くなる恐れがあります。
4. 高圧絶縁電線を同時に更新・交換する
PAS本体だけでなく、PASと変圧器などを繋ぐ高圧引き下げ線(リード線)の被覆が、紫外線によりひび割れているケースが多々見受けられます。
PAS交換工事の際は、必ず高所作業車やクレーンを手配します。足場があるこのタイミングでリード線の点検・交換も同時に行うことで、将来的なケーブル事故を防ぎ、二度手間によるコスト増を回避できます。
交換工事の流れと所要時間
PASの交換には、電力会社への申請と全停電が必要です。生産計画への影響を最小限にするため、一般的な流れを把握しておきましょう。
1. 現地調査・見積もり
• 現在の設置状況(PASの種類、電柱の高さ、周囲の道路状況など)を確認します。
2. 電力会社への申請
• 工事には電力会社との協議が必要です。申請から許可まで時間を要するため、工事希望日の1〜2ヶ月前には動き出す必要があります。
3. 工事当日(停電作業)
• 電力会社の配電線からの送電を停止してもらい(開閉器操作)、作業を行います。
• 作業時間目安:約3時間〜半日程度
• ※耐圧試験(設置後の安全確認試験)を含む。
4. 送電再開
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